石川由美子税理士事務所のblog

ここは大阪守口市の税理士事務所、石川税理士事務所のブログです。税法の改正や新しい制度などを詳しく解説しています。

2015年11月

1.背景
 地方活性化のため、都市部と地方の財源格差を平準化することを目的として、平成26年の税制改正により地方法人税が創設されておりました。
これにより、地方税である法人住民税のうち法人税割等を4.4%ダウンさせ、17.3%→12.9%(大阪の場合)とし、別途、この4.4%分を地方法人税として国が徴収し、地方交付税として各地方自治体へ配分されることとなりました。

*地方交付税とは?
 本来、地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保証する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分されるもので、一般財源(使途の制限がないということ)という性格をもつものです。
 また、地方交付税の財源は国税のうち、法人税のほか、所得税・消費税・酒税・タバコ税などが該当します。 *総務省HP参照
この改正はあくまでも地方財源の平準化を目的としているため、増税ということではなく、基本的には新たな税負担は生じさせるものではありません。

 
2.内容
  ① 適用開始時期
    平成26年10月1日以降開始事業年度から
  ② 税率
    課税標準法人税額×4.4%

 
*留意点 課税標準法人税額が生じない場合であっても、法人税申告書別表一の基準法人税額・地方法人税額・所得地方法人税額などの各欄に0と記載の上、提出する必要があります。

3.まとめ
  以上により、地方法人税の申告は一年決算法人の場合であれば9月決算の法人から順次適用開始となっております。したがいまして、申告作業まで自社で完結なさっている法人様は、申告書に記載するのを忘れないように十分注意が必要となります


4. 最近の動向
  平成27年11月16日、地方法人課税をめぐる喫緊の課題への対応として、地方自治確立を目指す東京都税制調査会の答申において、地方法人税及び地方法人特別税は、地方分権に逆行するため速やかに廃止し、地方税として復元すべきなどとして検討されていたようです。
これは、現在東京都では、類を見ない速さで高齢化が進んでおり、将来、莫大な社会保障関係の財政需要を抱えているということを考慮されたものだそうです。
 さらに、企業版ふるさと納税の導入の要望などもあり、毎年、地方税財政制度をめぐる状況については大きな動きがあるため、これからも注視していく必要がありそうです。

前回の更新に引き続き今回の更新は最低賃金の改定による社会保険料の変更についてです。
随時改定の条件を満たした場合どのような手続きが必要か、また具体的にはどのように計算するのかを解説していきます。

【1】随時改定の手続きについて
1.届出書類「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」
※添付書類は原則として不要ですが、改定月の初日から起算して60日以上遅延した届出の場合、または標準報酬月額が大幅(5等級以上)に下がる場合には以下の添付書類が必要となります。
   ○被保険者が法人の役員以外の場合
    1.賃金台帳の写し
      固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
    2.出勤簿の写し
      固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月分まで

   ○被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
    1.所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し
      固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
    2.以下の①~④のいずれか1つ
      ①株主総会または取締役会の議事録
      ②代表取締役等による報酬決定通知書
      ③役員間の報酬協議書
      ④債権放棄を証する書類
      ※ その他の法人の役員の場合は、これらに相当する書類

2.届出時期「速やかに」


【2】随時改定の具体例
 以下のパートの方を例に、具体的にご説明します。
 1.1日の労働時間:6時間、1か月の労働日数:22日
  (一般社員の場合、1日の労働時間:8時間、1か月の労働日数:22日)
 2.現行の等級:健保7等級・厚年3等級(標準報酬月額:110,000円)
  (838円×6時間×22日=110,616で算定)
 3.事業所の繁忙期:例年11月~12月、2月~3月

条件1.固定的賃金の変動あったこと
  10月より、最低賃金の改定に伴い、時間給(固定的賃金)を838円から858円へ昇給
  *この条件に該当*

条件2.「3か月の平均支給額に該当の標準報酬の等級」と「現行の等級」に2等級以上の差が生じたこと
  1.10月の支給額:113,256円
      858円×6時間×22日=113,256円
    11月の支給額:122,694円
      858円×6.5時間×22日=122,694円
       ※ 繁忙期のため1日の残業時間が0.5時間
    12月の支給:132,132円
      858円×7時間×22日=132,132円
       ※ 繁忙期のため1日の残業時間が1時間
  2.10月~12月の報酬の総計を3で除して1か月当たりの平均額
    113,256円+122,694円+132,132円=368,082円
      368,082円÷3か月=122,694円
  3.平均額によって求めた標準報酬の等級と現行の等級とを比較
    ①平均額によって求めた標準報酬の等級
      健保9等級・厚年5等級(標準報酬月額:126,000円)
    ②現行の等級
      健保7等級・厚年3等級(標準報酬月額:110,000円)
    ①と②の差
      2等級
   *この条件に該当*
※ 平均額が111,999円までの場合は1等級までの差のため、該当しません。
※ 固定的賃金の変動がなく、時間外手当の増減のみで、2等級以上の差がある場合も、該当しません。
※ 10月~12月で比較をするので、10月~12月は1等級差で、11月~1月で2等級以上の差がある場合も、該当しません。


標準報酬
月額等級
健保 厚年
標準報酬月額 標準報酬日額 標準月額
円以上     円未満
7 3 110,000 3,670 107,000 ~ 114,000
8 4 118,000 3,930 114,000 ~ 122,000
9 5 126,000 4,200 122,000 ~ 130,000
「大阪府 平成27年9月分からの社会保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h27/h270901/27osaka-h2709.pdf


条件3.3か月とも支払基礎日数が17日以上
    10月の支払基礎日数:22日
    11月の支払基礎日数:22日
    12月の支払基礎日数:22日
    *この条件に該当*
   ※ 10月~12月のうち、1月でも支払基礎日数16日以下の場合は、該当しません。


よって、具体例の場合は3つの条件を全て満たすため、随時改定を行います。1月に「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を提出し、1月分の社会保険料より新しい「標準報酬月額」に改定になります。

 一般的に、随時改定とは大幅な変更があった場合に行うものですが、以上のように、少額の昇給や降級でも該当する場合があります。給与の変更や各種手当の変更後の3か月は注意が必要です。

平成27年10月より、最低賃金が変更になっています。大阪府の「地域別最低賃金」は838円から858円に引き上げられたため、この改定に伴って、従業員さまの時間給の改定が必要になる事業所さまも多いのではないでしょうか。
また、4年に1回行われる社会保険の定時決定時調査により指摘を受け、パート・アルバイトの方を新たに社会保険に加入された事業所さまも多いのではないでしょうか。
 今回のブログの更新は、社会保険料第一回目として、時間給(固定的賃金)の変更により、社会保険の標準報酬月額も変更になる(随時改定)可能性があることについて、まず標準報酬月額の計算方法、変更の時期について解説します。

○最低賃金について詳しくはこちら

○社会保険の加入条件について詳しくはこちら

●社会保険料は標準報酬月額×保険料率で計算されます。標準報酬月額は基本的に、以下の3種類の時期・届出により決定します。

 1.定時決定(毎年改定)
  「実際の報酬」と「標準報酬月額」との間に大きな差が生じないように全従業員について、毎年4月~6月に支払われた報酬(通勤手当を含む。賞与は除く)の平均により、当年9月分以降の「標準報酬月額」決定することをいいます。
   ※ 届出書類「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届算定基礎届」    
         届出時期「毎年7月1日~10日」

 
2.取得時決定(入社時)
  新たに従業員が入社・または、契約の変更により社会保険の資格を取得する際に、「標準報酬月額」を決定することをいいます。この「標準報酬月額」は、月給の場合は、基本給・通勤手当等の手当で支給が決定しているものに、見込まれる時間外手当を含めて決定されます。
    ※ 届出書類「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」  
                   届出時期「入社日(事実発生日)から5日以内」

 
 3.随時改定(報酬額等に著しい変動があった場合)
  報酬が、昇給・降級等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときに、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定することをいいます。今回のパターンではこの随時改定にあてはまります。


随時改定の条件
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。

条件1.固定的賃金に変動があったこと
条件2.変動月以後引き続く3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたこと
条件3.3か月とも支払基礎日数が17日以上であること




次回の更新ではこの条件を満たした場合どのような手続きが必要か、またわかりやすいように計算方法をパートさんを例にとって解説していきます。

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