石川由美子税理士事務所のblog

ここは大阪守口市の税理士事務所、石川税理士事務所のブログです。税法の改正や新しい制度などを詳しく解説しています。

【1】平成28年4月~29年3月の雇用保険料率
平成28年4月1日から平成29年3月31日までの雇用保険料率は、下記のとおり引き下がります。

事業の種類 ①労働者負担 ②事業主負担 ①+②雇用保険料率
一般の事業 4/1000 7/1000 11/1000
農林水産・清酒製造の事業 5/1000 8/1000 13/1000
建設の事業 5/1000 9/1000 14/1000
※ 平成28年度の失業等給付の雇用保険料率は、労働者負担・事業主負担とも1/1000ずつ引き下がります。 なお、労災保険料率については、平成27年度と同率となります。

参考URL
平成28年度の雇用保険料率
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000119421.pdf#search='%E9%9B%87%E7%94%A8%E4%BF%9D%E9%99%BA%E6%96%99%E7%8E%87+28%E5%B9%B4%E5%BA%A6'


【2】雇用保険料控除の変更時期

従業員負担の雇用保険料控除は賃金締切日を基準として取り扱うことが原則となります。
よって、当月締・当月支給の場合は、4月支給分の給与より変更。当月締・翌月支給の場合は、5月支給分の給与より変更になります。

*当月締・当月支払(例)*
締日4月20日、支払日4月25日 → 新雇用保険料率で給与計算

*当月締・翌月支払(例)*
締日3月31日、支払日4月10日 → 旧雇用保険料率で給与計算
締日4月30日、支払日5月10日 → 新雇用保険料率で給与計算


事業者のかたはこのように雇用保険の計算方法が変更になるため、計算を間違わないようにご注意ください。 

1.背景

 近年、給与所得者の平均給与額が年々減少し、特にリーマンショック以降は低位の水準に留まっていたことを踏まえ、個人所得の拡大を図り、所得水準の改善を通じた消費喚起による経済成長を達成するため、企業による雇用・労働分配(給与等支給)の増加を促進するための税制措置として平成25年度税制改正により、この所得拡大促進税制が創設されておりました。

この制度は、ベースアップなど企業の従業員全体について給与等の支給額の増加を目指しており、目標達成を約5年とある程度長期的なものと捉え、その経過期間においても、一定水準が継続して増加しているときは適用可能とし、より目標達成されやすくなるような仕組みとなっているようです。

また、この制度発足後、より適用の受け皿を大きくするため、全従業員について減給されていないことなどの要件の廃止・給与等支給増加割合の要件の緩和・新卒増加その他による平均給与の低下などに対応した改正がなされ、より多くの法人について、適用の可能性が広がっているかと思われます。


2. 内容

法人の平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各期において、次の3つすべての要件を満たすときは、法人税額の20%(一定の法人は10%)を限度として、雇用者給与等支給増加額(以下参照)の10%の税額控除が認められています。


要件①  (制度設立当初と比べて給与が一定水準以上増加しているか)

          今期の給与 ― 基準期の給与      
           (雇用者給与等支給増加額)
       ――――――――――――――――― ≧  2%
              基準期の給与



要件②   (当期の給与支給額は前期分以上か)

          今期の給与   ≧   前期の給与 




要件③ (継続雇用中の現役世代の平均給与が前期分を越えているか)
          
          今期の平均給与  >  前期の平均給与
  

* その他の注意点 
・青色申告書を提出する法人に限る
・雇用促進税制・復興産業被災雇用等の特別控除などとの選択適用
・連結法人等については別段の取り扱いがある
・当初申告要件あり、適用額制限の見直しあり



3. 各要件について
  この制度は使用される用語が多いため、上記3要件の中身とその用語を下記いた
します。

○  要件①について
     (制度設立当初と比べて給与が一定水準以上増加しているか)
 
          今期の給与 ― 基準期の給与      
           (雇用者給与等支給増加額)
       ――――――――――――――――― ≧  2%
              基準期の給与 



(1)今期の給与とは (雇用者給与等支給額)
その期に損金算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

 ①国内雇用者とは
  法人の使用人のうち、その法人の国内事業所に勤務する雇用者をいいます。
 また、労働基準法に規定する賃金台帳に記載された者とされておりますの
 でパート・アルバイト・日雇い等も含みます。
 *役員・役員の親族等・その他役員と同一生計などの特殊関係者を除く
 *使用人兼務役員を除く(役員報酬分及び使用人給与分を除くということ)
 出向者については別段の取り扱いがある

 ②給与等とは
  所得税法第28条第1項に規定する給与等をいいます。したがいまして、
 俸給、給与、賃金、歳費、賞与等ならびにこれらの性質を有する給与をいいます。
 *支払給与に充てるための助成金等を除く(特定就職困難者雇用開発助成金etc)
 *退職手当など退職所得となるものは除く
 *損金算入の未払い給与を含めることができる
 *賃金台帳記載の所得税法上非課税の通勤手当等を含めることができる



(2)基準期の給与とは (基準雇用者給与等支給額)
  平成25年4月1日以後に開始する期のうち、一番古い期の前の期(以下基準
 期とします)において損金算入された国内雇用者に対する給与等支給額をいい
 ます。したがいまして、3月決算かつ一年決算法人であれば、基準期は平成24
 年4月1日~平成25年3月31日となります。(平成25年4月1日以後新
 設の法人を除く)
 *基準期と当期の月数が異なるときは当期の月数を基準として割り戻す
 *設立期などで、基準期がないときは、設立期の給与等支給額の70%
 とする。
 例:平成25年10月に3月末決算法人を設立した場合に、平成26年度(12
 ヶ月)の基準雇用者給与等支給額を計算する場合→(平成25年10月~平成
 26年3月の雇用者給与等支給額)×12÷6×0.7


(3)2%という割合について
平成27年4月1日~平成30年3月31日までに開始する期については拡大改正がなされ、各々3%となっております。(一定の法人を除く)

○  要件②について
(当期の給与支給額は前期分以上か)

       今期の給与  ≧  前期の給与 
 
(1)前期の給与とは (比較雇用者給与等支給額)
   前期に損金算入された国内雇用者に対する給与等支給額をいいます。
   *最初の適用年度が設立期のときは0円とする
   *前期と当期の月数が異なるときは当期の月数を基準として割り戻す


○ 要件③について
(継続雇用中の現役世代の平均給与が前期分を越えているか)

       今期の平均給与  >  前期の平均給与

(1)  今期の平均給与とは (平均給与等支給額)
以下の算式で計算します。

                            継続雇用者給与等支給額

       ―――――――――――――――――

                                   給与支給増加額


(分子)継続雇用者給与等支給額とは
 前期と当期のいずれにおいても給与等の支給がある国内雇用者(以下継続雇
 用者)で、雇用保険法に規定する一般被保険者に対するものをいいます。
  *一般被保険者については、雇用保険加入手続きが完了しているかどうかは問
   わない
  *継続雇用制度対象者に対するものは除く(この制度へ移行する月の給与は継
   続適用を要件として制度移行前後両方含めることも認められています)
  *継続雇用者給与等支給額が0円のときは1円とする

(分母)給与等支給者数とは
  当期の各月ごとの継続雇用者給与等支給額に係る給与等の支給を受けた継続雇用者の延べ人数をいう。
  *同じ継続雇用者に同一月に2回以上の継続雇用者給与等の支給があった場合は
   その者は1人と数えること
  *継続雇用者給与等支給額が0円のときは1とする


(2) 前期の平均給与とは(継続雇用者平均比較給与等支給額)
   以下の算式で計算します。

                           継続雇用者平均比較給与等支給額

       ―――――――――――――――――――

                                給与支給増加額


 (分子)継続雇用者比較給与等支給額とは
   前期に係る給与等支給額のうち、当期の継続雇用者に係る金額をいい、
   継続雇用者給与等支給額に準ずるものをいいます。
   *この金額が0円のときは0となる。

  (分母)給与等支給者数とは
      (2)における(1)の取り扱いに準ずる


4.まとめ
 上記により、この3要件に当てはまる場合には前期より給与が増えた部分の10%を法人税から税額控除できるという内容となっております。

法人の設立期などには所得拡大を目指しているということもあって、おおよその法人で上記3要件に当てはまることとなっております。また、個人事業者にかかる事業所得等についても、法人の場合に準じた要件を満たす場合にはこの規定の適用が可能であるため十分に検討が必要かと思われます。

したがいまして、今年10月、最低賃金の上昇もなされたため、自社が上記3要件に当てはまるのかどうか今一度確認しましょう。


参考:経済産業省HP
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai-kaiseigo.htm

1.背景
 地方活性化のため、都市部と地方の財源格差を平準化することを目的として、平成26年の税制改正により地方法人税が創設されておりました。
これにより、地方税である法人住民税のうち法人税割等を4.4%ダウンさせ、17.3%→12.9%(大阪の場合)とし、別途、この4.4%分を地方法人税として国が徴収し、地方交付税として各地方自治体へ配分されることとなりました。

*地方交付税とは?
 本来、地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保証する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分されるもので、一般財源(使途の制限がないということ)という性格をもつものです。
 また、地方交付税の財源は国税のうち、法人税のほか、所得税・消費税・酒税・タバコ税などが該当します。 *総務省HP参照
この改正はあくまでも地方財源の平準化を目的としているため、増税ということではなく、基本的には新たな税負担は生じさせるものではありません。

 
2.内容
  ① 適用開始時期
    平成26年10月1日以降開始事業年度から
  ② 税率
    課税標準法人税額×4.4%

 
*留意点 課税標準法人税額が生じない場合であっても、法人税申告書別表一の基準法人税額・地方法人税額・所得地方法人税額などの各欄に0と記載の上、提出する必要があります。

3.まとめ
  以上により、地方法人税の申告は一年決算法人の場合であれば9月決算の法人から順次適用開始となっております。したがいまして、申告作業まで自社で完結なさっている法人様は、申告書に記載するのを忘れないように十分注意が必要となります


4. 最近の動向
  平成27年11月16日、地方法人課税をめぐる喫緊の課題への対応として、地方自治確立を目指す東京都税制調査会の答申において、地方法人税及び地方法人特別税は、地方分権に逆行するため速やかに廃止し、地方税として復元すべきなどとして検討されていたようです。
これは、現在東京都では、類を見ない速さで高齢化が進んでおり、将来、莫大な社会保障関係の財政需要を抱えているということを考慮されたものだそうです。
 さらに、企業版ふるさと納税の導入の要望などもあり、毎年、地方税財政制度をめぐる状況については大きな動きがあるため、これからも注視していく必要がありそうです。

↑このページのトップヘ