石川由美子税理士事務所のblog

ここは大阪守口市の税理士事務所、石川税理士事務所のブログです。税法の改正や新しい制度などを詳しく解説しています。

前回の更新に引き続き今回の更新は最低賃金の改定による社会保険料の変更についてです。
随時改定の条件を満たした場合どのような手続きが必要か、また具体的にはどのように計算するのかを解説していきます。

【1】随時改定の手続きについて
1.届出書類「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」
※添付書類は原則として不要ですが、改定月の初日から起算して60日以上遅延した届出の場合、または標準報酬月額が大幅(5等級以上)に下がる場合には以下の添付書類が必要となります。
   ○被保険者が法人の役員以外の場合
    1.賃金台帳の写し
      固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
    2.出勤簿の写し
      固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月分まで

   ○被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
    1.所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し
      固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
    2.以下の①~④のいずれか1つ
      ①株主総会または取締役会の議事録
      ②代表取締役等による報酬決定通知書
      ③役員間の報酬協議書
      ④債権放棄を証する書類
      ※ その他の法人の役員の場合は、これらに相当する書類

2.届出時期「速やかに」


【2】随時改定の具体例
 以下のパートの方を例に、具体的にご説明します。
 1.1日の労働時間:6時間、1か月の労働日数:22日
  (一般社員の場合、1日の労働時間:8時間、1か月の労働日数:22日)
 2.現行の等級:健保7等級・厚年3等級(標準報酬月額:110,000円)
  (838円×6時間×22日=110,616で算定)
 3.事業所の繁忙期:例年11月~12月、2月~3月

条件1.固定的賃金の変動あったこと
  10月より、最低賃金の改定に伴い、時間給(固定的賃金)を838円から858円へ昇給
  *この条件に該当*

条件2.「3か月の平均支給額に該当の標準報酬の等級」と「現行の等級」に2等級以上の差が生じたこと
  1.10月の支給額:113,256円
      858円×6時間×22日=113,256円
    11月の支給額:122,694円
      858円×6.5時間×22日=122,694円
       ※ 繁忙期のため1日の残業時間が0.5時間
    12月の支給:132,132円
      858円×7時間×22日=132,132円
       ※ 繁忙期のため1日の残業時間が1時間
  2.10月~12月の報酬の総計を3で除して1か月当たりの平均額
    113,256円+122,694円+132,132円=368,082円
      368,082円÷3か月=122,694円
  3.平均額によって求めた標準報酬の等級と現行の等級とを比較
    ①平均額によって求めた標準報酬の等級
      健保9等級・厚年5等級(標準報酬月額:126,000円)
    ②現行の等級
      健保7等級・厚年3等級(標準報酬月額:110,000円)
    ①と②の差
      2等級
   *この条件に該当*
※ 平均額が111,999円までの場合は1等級までの差のため、該当しません。
※ 固定的賃金の変動がなく、時間外手当の増減のみで、2等級以上の差がある場合も、該当しません。
※ 10月~12月で比較をするので、10月~12月は1等級差で、11月~1月で2等級以上の差がある場合も、該当しません。


標準報酬
月額等級
健保 厚年
標準報酬月額 標準報酬日額 標準月額
円以上     円未満
7 3 110,000 3,670 107,000 ~ 114,000
8 4 118,000 3,930 114,000 ~ 122,000
9 5 126,000 4,200 122,000 ~ 130,000
「大阪府 平成27年9月分からの社会保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h27/h270901/27osaka-h2709.pdf


条件3.3か月とも支払基礎日数が17日以上
    10月の支払基礎日数:22日
    11月の支払基礎日数:22日
    12月の支払基礎日数:22日
    *この条件に該当*
   ※ 10月~12月のうち、1月でも支払基礎日数16日以下の場合は、該当しません。


よって、具体例の場合は3つの条件を全て満たすため、随時改定を行います。1月に「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を提出し、1月分の社会保険料より新しい「標準報酬月額」に改定になります。

 一般的に、随時改定とは大幅な変更があった場合に行うものですが、以上のように、少額の昇給や降級でも該当する場合があります。給与の変更や各種手当の変更後の3か月は注意が必要です。

平成27年10月より、最低賃金が変更になっています。大阪府の「地域別最低賃金」は838円から858円に引き上げられたため、この改定に伴って、従業員さまの時間給の改定が必要になる事業所さまも多いのではないでしょうか。
また、4年に1回行われる社会保険の定時決定時調査により指摘を受け、パート・アルバイトの方を新たに社会保険に加入された事業所さまも多いのではないでしょうか。
 今回のブログの更新は、社会保険料第一回目として、時間給(固定的賃金)の変更により、社会保険の標準報酬月額も変更になる(随時改定)可能性があることについて、まず標準報酬月額の計算方法、変更の時期について解説します。

○最低賃金について詳しくはこちら

○社会保険の加入条件について詳しくはこちら

●社会保険料は標準報酬月額×保険料率で計算されます。標準報酬月額は基本的に、以下の3種類の時期・届出により決定します。

 1.定時決定(毎年改定)
  「実際の報酬」と「標準報酬月額」との間に大きな差が生じないように全従業員について、毎年4月~6月に支払われた報酬(通勤手当を含む。賞与は除く)の平均により、当年9月分以降の「標準報酬月額」決定することをいいます。
   ※ 届出書類「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届算定基礎届」    
         届出時期「毎年7月1日~10日」

 
2.取得時決定(入社時)
  新たに従業員が入社・または、契約の変更により社会保険の資格を取得する際に、「標準報酬月額」を決定することをいいます。この「標準報酬月額」は、月給の場合は、基本給・通勤手当等の手当で支給が決定しているものに、見込まれる時間外手当を含めて決定されます。
    ※ 届出書類「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」  
                   届出時期「入社日(事実発生日)から5日以内」

 
 3.随時改定(報酬額等に著しい変動があった場合)
  報酬が、昇給・降級等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときに、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定することをいいます。今回のパターンではこの随時改定にあてはまります。


随時改定の条件
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。

条件1.固定的賃金に変動があったこと
条件2.変動月以後引き続く3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたこと
条件3.3か月とも支払基礎日数が17日以上であること




次回の更新ではこの条件を満たした場合どのような手続きが必要か、またわかりやすいように計算方法をパートさんを例にとって解説していきます。

大阪府と府内市町村がオール大阪共同アピールを採択し平成30年度(2018年)から、特別徴収が徹底されることとなりました。
今回の更新では大阪府がなぜ個人住民税の特別徴収を徹底するのか、そもそも特別徴収とはなんなのかを解説していきたいと思います。



平成30年度(2018年)から、個人住民税(個人市民税・府民税)について、安定した財源の確保と納税者の利便性の向上を図るために、所得税の源泉徴収と同様、府内市町村が、原則として給与支払者である事業主すべてを一斉に特別徴収義務者として指定し、個人住民税の特別徴収が徹底されることとなりました。

これは、事業者側で特別徴収の実施が困難であった場合や、普通徴収との選択制と認識されていたということもあり、市町村側でも、事実上は事業者側の選択によって徴収方法が変わってくるため、徴収の安定が確保できないという状況を踏まえたものとなっております。
したがって、この取り組みにより、基本的に全事業者様が特別徴収のうえ、納付することとなります。
 この取組みについて、広く住民の方々に知っていただくため、平成27年9月18日に大阪府と府内市町村とで「オール大阪共同アピール」が採択されました。

○ 特別徴収とは?
地方税や社会保険料を、本来の納税義務者である個人から直接徴収し納付させるのではなく、当該納税義務者が得る給与や公的年金を支払う事業者(特別徴収義務者)が税金等を代わって預かりその徴収すべき税金等を納入させることをいう(地方税法1条1項9号)。
この制度が適用される税金等については特別徴収による納入が原則となっております。
なお、年の中途で退職する等により特別徴収できない場合は普通徴収(直接本人が納めること)により納入されておりました。

*特別徴収によるメリットは?
従業員側 一回の納税負担が少なくなる。 納税忘れがなくなる。
市町村側 税収の安定化が図れる。 事務負担の軽減など。


*特別徴収適用対象税目は?
個人住民税(給与所得・配当所得・利子所得・株式譲渡所得・退職金所得などから徴収)
介護保険料
国民健康保険料(税)
後期高齢者医療保険料
ゴルフ場利用税
入湯税

○実施スケジュール
平成27~29年  一斉指定に向けた準備・周知活動
平成29年冬頃   事業主への指定予告通知の送付
平成30年5月   一斉指定実施 特別徴収税額決定通知書の送付
                    (特別徴収義務者に指定)

参考:大阪市HP 
http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000097841.html

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