石川由美子税理士事務所のblog

ここは大阪守口市の税理士事務所、石川税理士事務所のブログです。税法の改正や新しい制度などを詳しく解説しています。

 今年の1月から相続税の基礎控除額が引き下げられ、相続税の申告をしなければならない人が4%程度から6%へ増えるのではないかとも言われています。
 そこで今回の更新では、相続税の計算にあたり重要となってくるであろう路線価について平成27年分が7月に国税庁より発表されましたので、こちらの内容をまとめてみようと思います。


1. 路線価って何??

 そもそも路線価とは、相続税や贈与税を計算するために、国税庁が定めた1平方メートルあたりの土地の評価額で、不動産用語辞典によると次のように書かれています。

〝 国税庁が公共価格などを参考にして評定する、市街地の道路に沿った宅地の1平米あたりの評価額を「路線価」といいます。
 宅地に接する道路に対して正面、側方、二方と分け、それぞれに設定する額を示します。
 相続税、贈与税、地価税においては、この路線価が評価基準となります。
 この路線価は、毎年1月1日を評価時点として評価、毎年8月頃に一般公開され、全国の税務署や国税庁のホームページで閲覧できます。〝


2. 今年の傾向は!?

 全国平均は前年比-0.4%と7年連続で下落となりましたが、下げ幅は前年より0.3ポイント縮小し下げ止まりの傾向にあるようです。都道府県別の平均では、宮城県と愛知県が三年連続の上昇、また、福島県・東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・大阪府の6都府県が二年連続の上昇、京都府と沖縄県が上昇へと転じました。
 都道府県庁所在地の最高路線価の上昇率上位は下の表のとおりで、東京オリンピックを控えた東京が価格、上昇率ともトップとなっています。2位は名古屋で、リニア中央新幹線の開業に向けての再開発が進んでいることが原因のようです。3位の広島はオフィス需要の増加を背景としている様子。大阪駅前の再開発が続いている阪急百貨店本店前が続いています。6位の金沢は北陸新幹線の開業が影響していると思われます。

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3. 大阪国税局管轄の動向は!?

 大阪国税局管内(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)の税務署ごとの最高路線価について見てみますと、大阪・神戸・京都の都市地域と山間部や紀伊半島の南部などの過疎地域との差が拡大していく二極化の傾向となっています。各府県の動向は以下の通りとなっています。
① 大阪府
大阪駅周辺を管轄している北・大淀両税務署とあべのハルカス周辺を管轄している天王寺・阿倍野両税務署の最高路線価が10%超上昇しているのをはじめ、その他でも上昇及び横ばい傾向となっています。
② 京都府
東山税務署の最高路線価で7.3%上昇しているのをはじめ、下京・中京・左京の各税務署で5%台の上昇のほか、その他でも上昇及び横ばい傾向となっています。
③ 兵庫県
芦屋税務署で5.2%上昇しているのをはじめ、神戸・姫路・西宮・三木の各税務署で3%台の上昇となっています。一方で山間部を管轄する柏原税務署や和田山税務署、県西部を管轄する龍野税務署や相生税務署が下落傾向と二極化がみられます。
④ 滋賀県
大津税務署や草津税務署は4%台の上昇ですが、県南部の山間部を管轄する水口税務署では1.6%、湖西北部を管轄する今津税務署では5.3%の下落となっています。
⑤ 奈良県
奈良・葛城・桜井の各税務署では横ばいですが、吉野税務署が2.0%の下落となっています。
⑥ 和歌山県
和歌山・粉河・湯浅の各税務署では横ばいですが、それ以外の海南・御坊・田辺・新宮の各税務署では下落となっています。


 大阪国税局管内の詳しい路線価はこちらをご参照ください。  
http://www.nta.go.jp/osaka/kohyo/press/hodo/h27/rosenka/beppyo.htm

小規模事業主の方は、源泉所得税の納付を半年分まとめてできる納期の特例という制度があります。今回の更新はこの制度の内容や必要な手続、注意点を解説します。


1. 納期の特例とは

① 特例の内容
事業主(会社や個人事業主)が給与・賞与・一定の報酬(以下、給与等といいます)から源泉徴収した所得税は、原則としてその支払った日の翌月10日に納付する必要があります。しかし、給与を支払う役員や従業員(以下、従業員等といいます)の人数が常時9人以下の場合には、この制度を使って源泉所得税の納付のタイミングを7月10日(1~6月分)と1月20日(7~12月分)の年2回にまとめることができ、集計作業や銀行へ行く手間を省くことができます。

② 適用対象となる源泉所得税
この特例の適用対象となる源泉所得税は以下のものに限られます。
(ア) 従業員等への給与・賞与・退職金に関するもの
(イ) 弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・弁理士など特定の資格を持つ人へ支払う報酬に関するもの
※原稿料・デザインの報酬・保険外交員へ支払う報酬に関するものについては、特例の適用を受けている事業所であっても、原則通りその支払った日の翌月10日までに納付(毎月納付)することが必要です。


2. 必要な手続き

 この特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受ける必要があります。提出先は、給与等の支払を行う事業所の所在地を管轄する税務署長です。この手続きは“申請”なので、提出先の税務署長から“承認”を受ける必要がありますが、過去に滞納があるなどの事情がなければ、承認や却下の通知はほとんど来ることがないようです。通知が来ない場合には提出した日の翌月末日に承認があったものとしてこの特例の適用を受けることになります。
 この特例の適用開始時期は、承認があった月からとなりますので、提出した日の翌月以降に支払う給与等については、7月10日か1月20日が納付期限となりますが、その申請書を提出した月に支払う給与等については、その翌月の10日が納付期限となりますので、こちらの納付を忘れないように注意しましょう。

例:9月25日に申請書を提出した場合(10月31日に承認を受けたものとなります)

       9月分                10月~12月分
        ↓                   
    10月10日に納付             翌年1月20日に納付


3. この特例を受けない方がいい場合

 この特例の適用を受けた後は、半年分の源泉所得税をまとめて納付することになりますので、毎月の資金繰りや集計作業の回数は減り、一見ラクになります。その半面7月と1月に資金流出と集計作業が半年分集中することになりますので、この時期が忙しい事業主の方などはあえてこの特例を受けずに、通常通り毎月納付をする方がいい場合もあります。


4. 従業員等が10人以上になったら

 従業員等が常時10人以上となる場合には、この特例の適用を受けることができなくなります。この場合には「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を特例の申請をした税務署に提出します。この手続きは“届出”ですので提出するだけでよく、“承認”を受ける必要はありません。
 また、この場合には提出した月から特例が不適用となりますので、提出日の月までの源泉所得税を提出日の翌月の10日に納付することになります。
 例:9月25日に届出書を提出した場合
 
     
       7月~9月分             10月分
         ↓                
      10月10日に納付          11月10日に納付


5. 住民税の特別徴収にも同様の制度があります。

 源泉所得税と同様に、住民税の特別徴収分についても、半年分をまとめて支払う納期の特例の制度があります。適用要件も源泉所得税と同じなので、合わせて検討してみてはいかがでしょうか。ただし、源泉所得税が1~6月分と7~12月分に分けるのに対して、住民税は、6~11月分(12月10日納付)と12~5月分(6月10日納付)に分けることとなり、期間と納付期限がひと月ずつズレますので注意が必要です。

※住民税の特別徴収とは、事業主が従業員等に支払う毎月の給与から住民税の1カ月分を預かり、その従業員等に代わって各市町村に納付する方法をいいます。

「美術品って、減価償却できないの?」

こういった質問をお客様から受けることがあります。
今回の更新は近年改正のあった美術品等の減価償却の取り扱いについて
説明したいと思います。


 車や機械などの事業用資産は使い続けていると性能が劣化し故障が生じやすくなります。
これらの資産については、減価償却という(会計上の)手続きを通じて耐用年数にわたって
費用化することになります。
これに対して、同じ事業用資産でも、次のいずれかの要件をみたす美術品等(※)は、「時の経過によりその価値が減少しないもの」として減価償却の対象にはなっていませんでした。
 ※美術品等…絵画や彫刻品等の美術品

 ● 美術関係の年鑑等に登録されている作者の制作にかかる作品であること
 ● 取得価額が1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)以上であること

 しかし、「美術関係の年鑑等」は複数存在しますし、実際のところ、お金さえ支払えば誰でもそこに掲載してもらうことができます。これでは掲載基準があいまいですし、さらに美術品の金額基準として20万円は低すぎるのではないか、と考えることもできます。

 そこで、取扱通達の改正が行われており、平成27年1月1日以後取得する美術品等について新しい取扱いが公表されました。

 改正後の取扱いは、次の2つの基準(”価値”と"金額”)に照らして美術品等を判断することになります。
まず、その美術品等が古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値を有し、代替性のないものかどうかを判断します。これに該当した美術品等は「時の経過によりその価値が減少しないもの」として減価償却することができません。
該当しないものについては、金額基準で判定することになります。
この金額基準、改正前は取得価額が1点20万円でしたが、改正後はこれが1点100万円まで引き上げられました。
つまり、歴史的価値を有さない美術品等で、その取得価額が100万円未満であれば
原則として減価償却資産に該当し、100万円以上であれば非減価償却資産に該当することになります。

ただし、取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、
「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことできます。
それでは、この場合の「時の経過によりその価値が減少することが明らかな」美術品等とは具体的にどのようなものが該当するのでしょうか?
国税庁から公表された「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」によると、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当します。

 ① 不特定多数の者が利用する場所(会館のロビーや葬祭場のホールなど)
   に装飾したり、無料で展示するために取得されるものであること。 

 ② その用途にのみ使用されることが明らかなもので、移設することが困難なもの。

 ③ 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て
   美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
 
なお、この例示に該当しない美術品等が「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当するかどうかの判定は、実態を踏まえて判断することになります。


では昔買った美術品はどうなるのでしょうか?


 先ほども書きましたが、改正後の取扱いは、平成27年1月1日以後に取得する美術品等について適用されます。したがって、同日以前に取得した美術品等については原則として改正前の取扱いによることになります。
ただし、すでに取得している美術品等については、改正後の取扱いに基づいて再度判定することも認められます。
この判定の結果、減価償却資産に該当することとなった美術品等については、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(以下「適用初年度」といいます。)から減価償却を行うことになります。

この場合の償却方法は、原則としてその美術品等を実際に取得した日に応じて適用される償却方法(旧定額法・定額法・旧定率法・250%定率法・200%定率法)によることとなります。
ただし経過的取扱いとして、その美術品等を適用初年度開始の日に取得したものとみなして、定額法または200%定率法を選択することもできます。さらに青色申告者で(当時の)取得価額が30万円未満の美術品等であれば、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の規定の適用をうけることもできます。
これを表で示すと次のとおりとなります。

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 なお、適用初年度に減価償却資産の再判定を行わなかった美術品等については、その後の事業年度で減価償却することはできません。
つまり、再判定のチャンスは1回限りなので、適用初年度の適用には充分注意が必要です。

※ 減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、それぞれの美術品等の構造や材質等に応じて、下記の区分に従って判定することになります。

 (1) 室内装飾品のうち主として金属製のもの(金属製の彫刻など)……… 15年
 (2)室内装飾品のうちその他のもの………………… 8年

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