石川由美子税理士事務所のblog

ここは大阪守口市の税理士事務所、石川税理士事務所のブログです。税法の改正や新しい制度などを詳しく解説しています。

7月最後の更新の今回は消費税の納める金額を計算する二つの方法
原則課税方式簡易課税方式について詳しく解説していこうと思います。


1. 原則課税方式について
原則課税方式とは、「預かった消費税」(売上の8%)から「支払った消費税」
(通常の仕入や外注費、その他の支払い諸経費で、消費税の課税されるものの8%
*以下、仕入れ等で支払った消費税とします。)を差し引いて計算する方式です。

なお、給料や社会保険料等ついては、支払いがあっても消費税は非課税となっております。

 例えば、108円で仕入れた商品を216円で売り上げた場合は、
「預かった消費税」16円 – 「支払った消費税」8円 = 8円を
消費税として納付します。

  売上で預かった消費税    仕入れ等で支払った消費税      納める消費税
(216円÷1.08×8%=16円) -    (108円÷1.08×8%=8円)  =      8円

☆注意事項
 次の事業者さまについては、その期間につき、仕入れ等で支払った消費税は、その全額を差引できなくなりますので、一定の調整が必要となります。
①課税される売上が5億超える期間のとき
②非課税となる売上の割合が、すべての売上に対して、一定割合を超える期間のとき


2. 簡易課税方式について
もう一方の簡易課税方式とは、「預かった消費税」から「預かった消費税」に業種ごとに定められた一定の率(みなし仕入れ率)をかけて算出した税額を「支払った消費税」とみなして、簡便的に計算する方式で、その課税期間の前々年(又は前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者が受けられる特例です。


○ みなし仕入率ついての一覧表
270731①

(注) 平成27年4月1日以後に開始する課税期間から、 簡易課税制度のみなし仕入れ率について、現行の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そのみなし仕入率を50%(現行60%)とするとともに、現行の第五種事業のうち、不動産業を第六種事業とし、そのみなし仕入率を40%(現行50%)とすることとされました。



  例えば、上記と同じ例で、簡易課税適用の卸売業の商品売上の場合、216円の売上は、それにかかる「預かった消費税」16円に対し、「支払った消費税」を90%(業種によって相違あります)とみなして計算します。
従いまして、「預かった消費税」16円-「預かった消費税×90%」14円の差額2円を消費税として納付します。
 

売上で預かった消費税       仕入れ等で支払った消費税        納める消費税

216円÷1.08×8=16円)-売上消費税16×90(卸売業)(の商品)(売上)14()(とき))=   2

               270731②

 上記の例であれば、計算上、原則の場合8円、簡易の場合2円を納めることとなります。

従いまして、どちらの方法を採用するかは、実際のご自分の事業について、売上に対する通常の仕入や外注費、その他の支払い諸経費がいくらかかっているかなどを計算していただいた上でご検討くださいませ。
なお、給料や社会保険料等ついては、支払いがあっても消費税は非課税となっておりますので、仕入等で支払った消費税には含まれません。


☆ 注意事項
簡易課税制度は2期間強制適用となり、業績変動の大きい業種や設備投資を検討している事業者様についてはその適用につき注意が必要です。


参考 : 国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6505.htm

国外転出時課税の制度の導入により平成27年7月1日以後に一定の資産をお持ちの方について
国外転出されたときや、国境をまたいで贈与・相続があったときは、所得税の確定申告の手続き等が必要となりました。
    

背景
従前において、日本の租税条約上、原則として国内に居住している方の株式等売却益(キャピタルゲイン)については、国内に課税権があることから、国内所得として課税されることとなっておりました。

しかしながら、同族会社のオーナーやファンド関係者などの富裕層が、キャピタルゲインを非課税としている国(例:香港・シンガポール・ニュージーランド・スイス)に移住することにより、その後の売却時に実現する売却益について譲渡所得税課税を回避するというスキームが可能となっておりました。

このような国境をまたいだ租税回避を防止するという観点から、この税制が創設され、国外転出時に譲渡したものとみなされ、譲渡所得税課税されることとなりました。



国外転出時課税について
対象者が国外転出(国内に住所又は居所を有しなくなることをいいます。)されたときの
適用要件等は以下の通り

1. 対象者 : 国外転出時に次のすべてに該当する居住者であること
①所有している対象資産の価額の合計が1億円以上であること
②原則として、国外転出の日前10年以内において、国内在住期間が5年を超えていること。


2. 対象資産 : 株式(非上場株式を含む)・出資持分・投資信託・未決済信用取引・未決済デリバティブ取引など
*所有している対象資産の価額の合計が1億円以上であるかどうかの判定は、含み益があるかどうかにかかわらず,すべての対象資産の合計額で判定します。
また、譲渡所得が非課税のとなる国債地方債等の公社債やNISA口座内の有価証券・国外所有の対象資産も含まれます。
なお、上記の譲渡所得が非課税となる国債地方債等の公社債等については、平成28年1月1日以後の譲渡は課税対象となります。


3. 手続き : 申告・納付期限や金額判定の時期について  
①国外転出につき納税管理人の届出をしたとき 
国外転出の時に決済したものとみなし、国外転出をした年分の確定申
告期限までに申告納付する。
*未実現利益に課税されるため、納税管理人の届出をした場合に限り、一定の書類を提出し、かつ、担保提供したときは納税の猶予を受けることも可能。

②国外転出につき納税管理人の届出をしなかったとき
国外転出予定日から起算して3か月前の日に決済したものとみなし、
国外転出の時までに申告納付する。(その3月内に新規得したものは
その取得等の日に決済したものとみなす。)

*国外転出日から5年以内に帰国したなどの場合で、引き続き所有している対象資産については、課税の取消が可能。  
    

国外転出(贈与・相続)時課税について
以下の場合にはそれぞれの者に対して適用されることが考えられますが、その適用要件等はおおむね国外転出の場合に準じるようです。

①対象者が国外居住親族等(非居住者)に対象資産を贈与した場合の贈与者について適用

②対象者について相続があり、相続・遺贈により国外居住の相続人・受遺者が対象財産を取得した場合の被相続人について適用




参考 : 国税庁HP
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/denshi-sonota/kokugai/01.htm

政府により平成27年4月1日より「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」が創設されました。今回はこの制度について詳しく解説していこうと思います。
国税 結婚子育て画像
 ※国税庁HPより抜粋

背景
日本の60歳以上世帯の平均貯蓄は2,000万円を超えています。また、日本の全世帯の貯蓄総額の6割以上を60歳以上世帯が占めていると言われています。
そんな資産持ちが多い高齢者層に対して、若年層については、総じて貯蓄率が低いため将来に対する経済的不安から結婚・出産を躊躇する傾向にあります。
このような背景から両親や祖父母の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・子育てを支援することを目的としてこの税制が創設されました。



制度の概要
この制度は、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、祖父母や両親が、20歳以上50歳未満の子や孫名義の金融機関の口座等に結婚・子育て資金を一括して拠出した場合には、子・孫ごとに1,000万円(結婚関係は300万円)を限度に贈与税が非課税になる制度です。
 ※この制度の適用を受けるためには、金融機関等を経由して結婚・子育て資金非課税申告
       書を提出する必要があります。
 ※50歳到達時に残額があれば、それに対して贈与税が課税されます。



非課税となる主な費目
非課税となる資金の使用方法としては、次のようなものが挙げられます。

1.  結婚関係
① 挙式や結婚披露宴を開催するために要する費用
   例)会場費、衣装代、引き出物代、招待状等。
     ☆ 海外挙式代・二次会に係る費用もOK。
     ☆ 入籍日の1年前の日以後に支払われたものに限ります。
    ※ 対象とならないもの
      結婚指輪の購入費、挙式に出席するための交通費、新婚旅行代

② 結婚を機に新たにかかる費用
   例)新たに物件を賃借する際に要した賃料等、仲介手数料、新たな物件に
                  転居するために要した引越し費用等
     ☆ 支払日が入籍日の1年前後以内のものに限られるなど
                       一定の要件があります。
 
2. 子育て関係
① 妊娠に要する費用
    例)人工受精など不妊治療に要する費用、妊婦検診に要する費用
     ☆ 保険適用や公的助成の受給有無は問いません。
    ※対象とならないもの
     不妊治療等のために遠隔地や海外に渡航する際の交通費や宿泊費

② 出産に要する費用
     例)分べん費、入院費、検査・薬剤料、新生児管理保育料、入院中の食事代、
      出産日以後1年以内に支払われた産後ケアに要する費用

③ 育児に要する費用
     例)未就学児の子に対する治療、予防接種、乳幼児健診、医薬品に要する費用、
       保育園・幼稚園等の入園料、保育料(ベビーシッター費用含む)
     ※対象とならないもの
      処方箋に基づかない医薬品代、通院のための交通費

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