石川由美子税理士事務所のblog

ここは大阪守口市の税理士事務所、石川税理士事務所のブログです。税法の改正や新しい制度などを詳しく解説しています。

2015年09月

小規模事業主の方は、源泉所得税の納付を半年分まとめてできる納期の特例という制度があります。今回の更新はこの制度の内容や必要な手続、注意点を解説します。


1. 納期の特例とは

① 特例の内容
事業主(会社や個人事業主)が給与・賞与・一定の報酬(以下、給与等といいます)から源泉徴収した所得税は、原則としてその支払った日の翌月10日に納付する必要があります。しかし、給与を支払う役員や従業員(以下、従業員等といいます)の人数が常時9人以下の場合には、この制度を使って源泉所得税の納付のタイミングを7月10日(1~6月分)と1月20日(7~12月分)の年2回にまとめることができ、集計作業や銀行へ行く手間を省くことができます。

② 適用対象となる源泉所得税
この特例の適用対象となる源泉所得税は以下のものに限られます。
(ア) 従業員等への給与・賞与・退職金に関するもの
(イ) 弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・弁理士など特定の資格を持つ人へ支払う報酬に関するもの
※原稿料・デザインの報酬・保険外交員へ支払う報酬に関するものについては、特例の適用を受けている事業所であっても、原則通りその支払った日の翌月10日までに納付(毎月納付)することが必要です。


2. 必要な手続き

 この特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受ける必要があります。提出先は、給与等の支払を行う事業所の所在地を管轄する税務署長です。この手続きは“申請”なので、提出先の税務署長から“承認”を受ける必要がありますが、過去に滞納があるなどの事情がなければ、承認や却下の通知はほとんど来ることがないようです。通知が来ない場合には提出した日の翌月末日に承認があったものとしてこの特例の適用を受けることになります。
 この特例の適用開始時期は、承認があった月からとなりますので、提出した日の翌月以降に支払う給与等については、7月10日か1月20日が納付期限となりますが、その申請書を提出した月に支払う給与等については、その翌月の10日が納付期限となりますので、こちらの納付を忘れないように注意しましょう。

例:9月25日に申請書を提出した場合(10月31日に承認を受けたものとなります)

       9月分                10月~12月分
        ↓                   
    10月10日に納付             翌年1月20日に納付


3. この特例を受けない方がいい場合

 この特例の適用を受けた後は、半年分の源泉所得税をまとめて納付することになりますので、毎月の資金繰りや集計作業の回数は減り、一見ラクになります。その半面7月と1月に資金流出と集計作業が半年分集中することになりますので、この時期が忙しい事業主の方などはあえてこの特例を受けずに、通常通り毎月納付をする方がいい場合もあります。


4. 従業員等が10人以上になったら

 従業員等が常時10人以上となる場合には、この特例の適用を受けることができなくなります。この場合には「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を特例の申請をした税務署に提出します。この手続きは“届出”ですので提出するだけでよく、“承認”を受ける必要はありません。
 また、この場合には提出した月から特例が不適用となりますので、提出日の月までの源泉所得税を提出日の翌月の10日に納付することになります。
 例:9月25日に届出書を提出した場合
 
     
       7月~9月分             10月分
         ↓                
      10月10日に納付          11月10日に納付


5. 住民税の特別徴収にも同様の制度があります。

 源泉所得税と同様に、住民税の特別徴収分についても、半年分をまとめて支払う納期の特例の制度があります。適用要件も源泉所得税と同じなので、合わせて検討してみてはいかがでしょうか。ただし、源泉所得税が1~6月分と7~12月分に分けるのに対して、住民税は、6~11月分(12月10日納付)と12~5月分(6月10日納付)に分けることとなり、期間と納付期限がひと月ずつズレますので注意が必要です。

※住民税の特別徴収とは、事業主が従業員等に支払う毎月の給与から住民税の1カ月分を預かり、その従業員等に代わって各市町村に納付する方法をいいます。

「美術品って、減価償却できないの?」

こういった質問をお客様から受けることがあります。
今回の更新は近年改正のあった美術品等の減価償却の取り扱いについて
説明したいと思います。


 車や機械などの事業用資産は使い続けていると性能が劣化し故障が生じやすくなります。
これらの資産については、減価償却という(会計上の)手続きを通じて耐用年数にわたって
費用化することになります。
これに対して、同じ事業用資産でも、次のいずれかの要件をみたす美術品等(※)は、「時の経過によりその価値が減少しないもの」として減価償却の対象にはなっていませんでした。
 ※美術品等…絵画や彫刻品等の美術品

 ● 美術関係の年鑑等に登録されている作者の制作にかかる作品であること
 ● 取得価額が1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)以上であること

 しかし、「美術関係の年鑑等」は複数存在しますし、実際のところ、お金さえ支払えば誰でもそこに掲載してもらうことができます。これでは掲載基準があいまいですし、さらに美術品の金額基準として20万円は低すぎるのではないか、と考えることもできます。

 そこで、取扱通達の改正が行われており、平成27年1月1日以後取得する美術品等について新しい取扱いが公表されました。

 改正後の取扱いは、次の2つの基準(”価値”と"金額”)に照らして美術品等を判断することになります。
まず、その美術品等が古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値を有し、代替性のないものかどうかを判断します。これに該当した美術品等は「時の経過によりその価値が減少しないもの」として減価償却することができません。
該当しないものについては、金額基準で判定することになります。
この金額基準、改正前は取得価額が1点20万円でしたが、改正後はこれが1点100万円まで引き上げられました。
つまり、歴史的価値を有さない美術品等で、その取得価額が100万円未満であれば
原則として減価償却資産に該当し、100万円以上であれば非減価償却資産に該当することになります。

ただし、取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、
「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことできます。
それでは、この場合の「時の経過によりその価値が減少することが明らかな」美術品等とは具体的にどのようなものが該当するのでしょうか?
国税庁から公表された「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」によると、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当します。

 ① 不特定多数の者が利用する場所(会館のロビーや葬祭場のホールなど)
   に装飾したり、無料で展示するために取得されるものであること。 

 ② その用途にのみ使用されることが明らかなもので、移設することが困難なもの。

 ③ 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て
   美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
 
なお、この例示に該当しない美術品等が「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当するかどうかの判定は、実態を踏まえて判断することになります。


では昔買った美術品はどうなるのでしょうか?


 先ほども書きましたが、改正後の取扱いは、平成27年1月1日以後に取得する美術品等について適用されます。したがって、同日以前に取得した美術品等については原則として改正前の取扱いによることになります。
ただし、すでに取得している美術品等については、改正後の取扱いに基づいて再度判定することも認められます。
この判定の結果、減価償却資産に該当することとなった美術品等については、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(以下「適用初年度」といいます。)から減価償却を行うことになります。

この場合の償却方法は、原則としてその美術品等を実際に取得した日に応じて適用される償却方法(旧定額法・定額法・旧定率法・250%定率法・200%定率法)によることとなります。
ただし経過的取扱いとして、その美術品等を適用初年度開始の日に取得したものとみなして、定額法または200%定率法を選択することもできます。さらに青色申告者で(当時の)取得価額が30万円未満の美術品等であれば、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の規定の適用をうけることもできます。
これを表で示すと次のとおりとなります。

270918


 なお、適用初年度に減価償却資産の再判定を行わなかった美術品等については、その後の事業年度で減価償却することはできません。
つまり、再判定のチャンスは1回限りなので、適用初年度の適用には充分注意が必要です。

※ 減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、それぞれの美術品等の構造や材質等に応じて、下記の区分に従って判定することになります。

 (1) 室内装飾品のうち主として金属製のもの(金属製の彫刻など)……… 15年
 (2)室内装飾品のうちその他のもの………………… 8年

今回の更新は今年の九月より改正になる社会保険料についてです。
この改正により9月や10月の給与から差し引く社会保険料の金額が
変わってきますので経営者の方はよく注意してください。


【1】標準報酬月額が改定になります
7月に届出をした「算定基礎届」により、平成27年9月分からの標準報酬月額が
改定になります。

社会保険料は標準報酬月額×保険料率で計算されます。標準報酬月額は基本的に、以下の
時期・届出により決定しますが、今回の改定は、1.の定時決定によるものです。
1.定時決定(毎年改定)
2.取得時決定(入社時)
3.随時改定(報酬額等に著しい変動があった場合)


【2】下記のとおり厚生年金保険料率が変更になります

厚生年金保険料率

平成27年8月分までの料率       平成27年9月分からの料率
全額      折半額         全額      折半額
17.474%    8.737%    →    17.828%    8.914%

参考URL
平成27年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(大阪府)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h27/h270901/27osaka-h2709.pdf



【3】9月分の社会保険料控除のタイミングにご注意ください

① 給与の締日が当月締で、給与の支給日が当月支給の場合
社会保険料を給与から控除するときは、原則として前月分の社会保険料を控除することになっています。
例えば、給与の締日が10月20日で支給日が10月25日の場合、この10月支給分の給与から9月分の社会保険料を控除することで、これを「翌月控除」いいます。

しかし、会社によっては、当月支給分の給与から当月分の社会保険料を控除する場合があります。
例えば、給与の締日が9月20日で9月25日の場合、この9月支給分の給与から9月分の社会保険料を控除することで、これを「当月控除」といいます。

よって、9月分の社会保険料の控除月は以下のとおりになります。
翌月控除」の会社の場合 10月分の給与から控除
当月控除」の会社の場合 9月分の給与から控除


② 給与の締日が当月締で、給与の支給日が翌月支給の場合
この場合は、社会保険料納付の時期との関係により、「当月控除」の会社がほとんどだと思います。
例えば、給与の締日が9月30日で支給日が10月15日の場合、この10月支給分の給与(9月分の給与)から9月分の社会保険料を控除することです。

よって、9月分の給与(10月支給分の給与)から9月分の社会保険料を控除します。

※このように、締日や支給日等により、控除のタイミングが変わりますので、ご注意ください。

※なお、この控除した9月分の社会保険料は、控除のタイミングに関わりなく、会社負担分と合わせて10月末に納付します。


今年の10月以降、国外からの電子書籍の購入や音楽配信に消費税が課税されます。

今回の更新では、国外からのインターネットを通じたサービス提供の普及をうけ、近々改正される役務の提供に係る消費税制度について解説していこうと思います。


1. 背景

 現在、国外からのインターネットを通じた電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等のサービスの提供には、消費税が課税されていないのに対して、同じサービスの提供であっても、国内からのこれらのサービスの提供には消費税が課税されています。なぜなら、現行の制度では「国内において事業者が行った資産の譲渡等(物の販売、貸付、サービスの提供)」に消費税が課税されており、電子書籍等の配信については、国内において行ったかどうかの判定は、その配信を行った事業者の事務所等がどこにあるかで行われていました。

 そこで同一内容のサービスの提供についての国内国外の不公平性をなくし、中立性を確保する観点から、平成27年10月1日以降は、海外からのこれらのサービスの提供に消費税を課税することとされました。

270903①

2. 制度の概要

・対象取引
 今回の改正の対象となるサービスの提供(以下、「電気通信利用役務の提供」といいます)具体的な内容は以下のような取引です。

   ⇛ インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像
    ソフトウェア(ゲームなどのアプリを含む)などの配信
   ⇛顧客に、クラウド上のソフトウェアやデータベースなどを利用させるサービス
   ⇛ 顧客に、インターネット等を通じた広告の配信・掲載
   ⇛ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させる
    サービス(商品の掲載料金等)
   ⇛ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
   ⇛インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト
    (宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
   ⇛ インターネットを介して行う英会話教室 など

・取引の内外判定の改正
 これらの「電気通信利用役務の提供」についての、国内取引に該当するかどうかの判定を、提供をする側の事務所等の所在地から、提供を受ける側の住所等の所在地に改正されます。したがって、これらのサービスの利用者の住所や事務所が国内にあれば、国内取引に該当し、消費税を課税されることとなります。
 なお、国内の事業者から受ける「電気通信利用役務の提供」については、これまでと変わらず消費税の課税対象です。

・課税方式の見直し
 本来、消費税は消費者が自ら国に対して税金を納めるものではなく、物を売ったりサービスを提供した事業者(売り手)が消費者(買い手)から物やサービスの値段に上乗せして預かり、この預かった消費税から仕入や経費にかかった消費税を差し引きして、国に納付する課税方式です。
 しかし、これらの「電気通信利用役務の提供」については、その内容により、①事業者向け取引と②それ以外(消費者向け取引)とに区分して、それぞれ以下の方法により、課税方式が見直されます。

① 事業者向け取引についての課税方式(リバースチャージ方式)
  サービスの性質やサービスの提供に係る契約条件等により、そのサービスの提供を受ける者が通常事業者に限られるもの(例:インターネットを介した広告の配信など)を「事業者向け電気通信利用役務の提供」として、この取引にかかる消費税については、本来の課税方式ではなく、サービスの提供を受けた側(買い手)に納税義務を転換(リバース)し、上乗せするはずの消費税部分を売り手に支払わず買い手に留め置く(チャージ)課税方式が採られます。
 具体的には、サービスの値段が10,000円とした場合に、本来の課税方式であれば、消費税8%分を上乗せして10,800円を支払うところ、10,000円のみを国外事業者(売り手)に支払い、800円を買い手が自ら日本国に納付することになります。なお、この800円については、申告する際に仕入税額控除の適用を受けることができ、最終的には国に納める必要はありません。
 なお、経過措置により当分の間は、課税売上割合が95%以上の事業者や簡易課税制度が適用される事業者については、納付をする税額と控除を受ける金額が同額となることもあり、このリバースチャージ方式により申告を行う必要はありません。
270903②


(考え方の参考)
 例えば、課税貨物に係る消費税については輸入者(仕入れを行った者等)が課税貨物に係る消費税額等を輸入時に申告納付するとともに、輸入時に納付した消費税額については、確定申告の際に仕入税額控除を行います。
 リバースチャージ方式は、この輸入時の納税を確定申告の際に同時に行っていると考えると分かりやすいのではないでしょうか。


② 消費者向け取引についての課税方式(国外事業者申告納税方式)
 国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、『事業者向け取引』に該当しないもの(例:電子書籍や音楽の配信)については、本来の課税方式と同様に、サービス提供者(売り手)である国外事業者に申告納税の義務を課す方式となります。
 具体的には、サービスの値段が10,000円とした場合に、本来の課税方式同様、国外事業者(売り手)に消費税8%分として上乗せして10,800円を支払い、国外事業者(売り手)が、日本国に800円の消費税を納めることになります。
 この場合において、サービスの提供を受けた側の国内事業者においては、課税仕入れが発生するのですが、そのサービスの提供者である国外事業者が登録国外事業者(国税庁のHPに掲載されます。http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/cross/touroku.pdf)でなければ、当分の間、仕入税額控除の適用を認められないのでご注意ください。

270903③



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